富士山


空一面の星と、5合目から頂上まで延々と続くヘッドライト、そして遥か雲の下に広がる街の明かり。
上も下も光の点で埋め尽くされた不思議な世界。


夜に登って良かった理由は2つ。


その幻想的な光景に身を置けたこと。
暗すぎて道のりの長さと険しさが足下に来るまでわからなかったこと。


東の空が明るくなりはじめ、それでもまだ街の光はゆらゆらときらめいている。
そんな様子を眺めたら、急に涙が出たのはなんだったんだろう。


空と海と山と雲と街、いっぺんに視界の中に収まってしまった景色が透き通るような優しい色をしていたからか。
とんでもないところに来てしまった。と今更気づいたからか。
あまりにも遠くに、あまりにも鮮明に人の住む場所を見てしまったからか。
それとも単純に、体力の限界と高山病の恐怖にすっかりやられてしまっていたからか。


いずれにせよ、明け方の空の美しさに感動して。というのとは違う涙の出方だった。
そう、ほんとに恐かった。



明るくなって下る道。
いつまでたっても雲の上。
木のない岩肌に視界を遮るものはなにも無く。
容赦なく降り注ぐ太陽の光を浴びながら、三連休の大渋滞。


はぁ、、、登って良かった。降りれて良かった。


そしてユウスケに謝りたい。
麓の民家の明かりは確かにとてもきれいだったから。